最近、地方や郊外の百貨店の閉店が相次いでいます。
なぜ地方や郊外の百貨店の閉店が増えているのでしょうか?
その理由は、売り上げ不振ですが、ではどうして百貨店の売り上げが不振になったのでしょうか?
また、地方や郊外では、百貨店閉店後の跡地の利用が決まらず、建物を解体して更地になったままになっているところもあります。
百貨店閉店後は、歩行者数が減少し、すっかりさびれてしまった街さえあるのです。
そこで今回は、地方や郊外の百貨店の相次ぐ閉店の背景、閉店後の跡地や地域の活気の問題、地方百貨店の成功例を紹介します。
なぜ百貨店の閉店が増えているの?
ここ数年、地方や大都市の郊外にある百貨店の閉店が相次いでいます。
今年も伊勢丹府中店と相模原店、甲府市の山交百貨店が9月30日に閉店しました。
閉店の原因は、売り上げ不振です。
都市部の百貨店では売り上げが増加している店舗もあるのに、なぜ、地方店や郊外店の売り上げが不振なのでしょうか?
理由はいくつかあります。
1 人口減少
地方や郊外は、都市部に比べて人口減少の影響を強く受ける傾向にあります。
総務省統計局の調査によると、2018年に転入が転出よりも多い「転入超過」は、東京都、大阪府、愛知県など8都道府県のみでした。
一方、他の39道府県は、転出が転入よりも多い「転出超過」でした。
しかも、これからの消費を担う20~30代の若年層の8都道府県への転入が増えているのです。
これでは、地方百貨店の将来は暗いと言わざるを得ません。
2 インバウンド需要なし
都市部では訪日外国人による需要がありますが、地方ではそのようなインバウンド需要が見込めません。
一時流行った訪日外国人が爆買などに来てくれていたのも、都心のお店ばかりでしたよね。
3 売り場面積の狭さ
地方店は売り場面積が狭いので、
商品のバリエーションが多くありまん。
これでは、わざわざ百貨店に行く気になれませんよね。
せっかく休日などに足を運ぶのであれば狭い店舗よりも、ちょっと都心に出ても大型店舗で商品を観たくなる気持ちもわかります。
4 顧客のニーズとの乖離
衣料品が売り上げの4割を占めていたのはかなり前のことですが、未だに婦人服売り場が大きなスペースを占めています。
今、地方店でニーズが見込めるのは、食料品と化粧品くらいです。
5 大型ショッピングセンターの存在
郊外のイオンモールなどの大型ショッピングセンターに顧客を奪われています。
中には会員制のコストコを始めとした、大型のアウトレットなどがあります。
お値段も手頃なのに選べる商品はすごくたくさんあるのでわざわざ百貨店に行かないのもお客さまの立場で考えたら当然かもしれません。
6 JR駅ビルの存在
JR各社が地方都市で展開している駅ビルには、コンビニエンスストア、衣料品店や飲食店などの商業施設が入り、「駅ナカ」という言葉も生まれました。
JRの乗降客は駅ビルで買い物をしますから、周辺の商業施設は採算がとれなくなってしまいます。
百貨店よりも便利な駅に隣接している商業施設の存在
JR駅ビルとの違いは、駅の中ではなく、駅に隣接していることです。
利便性で優位に立ちますから、他の商業施設の集客力は低下してしまいます。
実は、私の思い出の百貨店も、駅に隣接している商業施設と駅ビルの影響を受けて閉店してしまいました。
私の実家のある静岡県浜松市には、かつて「松菱百貨店」と「西武百貨店」という2つの百貨店がありました。
「松菱」が駅から徒歩5分くらい、「西武」が駅から徒歩10分くらいの場所にありました。
特に「松菱」は、創業が1937年という老舗の百貨店で、浜松市のシンボル的存在でした。
私も母親と月に何度も「松菱」に出かけ、屋上の遊園地で遊び、大食堂でお子様ランチを食べたり、百貨店の隣にある甘味処でラーメンとソフトクリームを食べるのが楽しみでした。
また、「西武」では友達とウィンドウショッピングを楽しんだ思い出があります。
しかし、1988年に浜松駅に隣接して「遠鉄百貨店」、JRの駅ビルに「メイワン」という商業施設が開業して以降、「松菱」と「西武」は客足が徐々に遠のいて、業績不振に陥ってしまいました。
その結果、1997年に「西武」が、2001年に「松菱」が相次いで閉店に追い込まれました。
思い出の百貨店が閉店したというニュースを聞いた時は、本当に悲しかったです。
百貨店の跡地や地域の活気はどうなるの?
百貨店には他の商業施設にはない格式の高さがあり、街に人々を引きつけ、地元の商店街と共存してきました。
しかし、百貨店が撤退した街は求心力を失い、ショッピングの場が郊外に移り、中心市街地の衰退に歯止めがかからないという悪循環が生じています。
百貨店撤退後の跡地が再利用されない状態が続くと、市街地の振興に悪影響を及ぼしてしまいます。
市街地は、買い物客の数が減少し、賑わいが消え、勢いを失ってしまうのです。
百貨店はどうしたら生き残れるの?

では、地方百貨店はどうしたら生き残れるのでしょうか?
成功例を一つ紹介します。
大阪府枚方市の近鉄百貨店枚方店の跡地にできた「枚方T-SITE」という複合商業施設は、「次世代の百貨店」として百貨店業界から注目されています。
「枚方T-SITE」には、ビルの上層部に銀行の店舗と英会話教室が入っています。
このように、街でニーズのある機能や公共性の高い施設を百貨店の中に入れることで、待ち時間に他の売り場に立ち寄ってもらい、購入のきっかけを増やすのです。
また「枚方T-SITE」には、書店、レンタルショップのTSUTAYA、カフェ、雑貨、衣類や化粧品を扱うショップ、英会話教室、無料の室内遊具スペース、資産管理などの相談を受ける銀行が入っています。
既存の地方百貨店と異なり、書店やカフェ、室内遊具スペースで長時間過ごせるようになっています。
かつての百貨店では、家族連れで屋上の遊園地で遊び、大食堂で食事をしていました。私の子供の頃のように・・・。
「枚方T-SITE」には、このようなかつての百貨店の機能があります。
運営者のカルチュア・コンビニエンス・クラブは、「枚方T-SITE」を生活提案型商業施設としています。
枚方市にT-SITEの郊外モデルを作ることで、地方百貨店の新しい形を提案したのです。
枚方市は、2012年に近鉄百貨店枚方店が閉店して以降、市街地の空洞化が進んでいました。
しかし、「枚方T-SITE」の開業で、再び人の流れが戻ってきています。
このような形の地方百貨店は、生き残りの一つのカギと言えます。
まとめ
今回は、地方や郊外の百貨店の閉店の背景や、閉店後の跡地や地域の活気の問題や地方百貨店の成功例をお伝えしました。
今後、「枚方T-SITE」のような新しい形の百貨店が、地方百貨店の生き残りのカギの一つになるのではないでしょうか?